ゲームは嫁と子供が寝てから。

嫁さんに怒られるのでコッソリ遊びます。

オーバルにハマったら知っておきたいセットアップの基礎知識

「こういう時はこうする」「ここを変えるとこうなる」という情報はそれなりにありますが、「そもそも○○はどういう物か(意味か)」という情報は少ないような気がするので(特に日本語の情報)、ここにまとめてみようと思います。真面目に書くと結構な分量になるので、何か思いついた時に追記していくスタイルで行きます。修正なども随時行っていくつもりです。
嘘・大げさ・紛らわしい等、至らないところはたくさんあると思うので、「これは違うんじゃ…」というところは実際にご自身でセットアップを試してみたり、他のサイトで正確な情報を確認してください。

クロスウェイト(Cross Weight)

クロスウェイトとは(ウェッジとも呼ばれます)、全体荷重に対する右フロント(RF)と左リア(LR)を足した荷重の割合のことを指します。例えば車重が1,000kgあるとして、RF+LR=550kgの時はクロスウェイトは55%、となります。この割合によりターン中の車の性格が決まります。50%より大きい場合はタイト(アンダーステア)に、小さい場合はルース(オーバーステア)になります。
この理屈は、例えばクロスウェイトが50%より大きい場合、横GによりLFはさらに荷重が小さくなり、RRは小さかった荷重が大きくなります。フロントはRFのみ、リアは両輪が仕事をしているため相対的にフロントのグリップが小さくなることになります。反対にクロスウェイトが50%より小さい場合、横G+減速GでRFの小さかった荷重が大きくなり、LRはさらに小さくなります。フロントは両輪、リアはRRのみが仕事をしているため相対的にリアのグリップが小さくなることになります。
クロスウェイトが">50%"の場合。赤で表した位置のタイヤに荷重がかかる。

クロスウェイトが"<50%"の場合。

コイルバインド(Coil-bind)

スプリッターを可能な限り路面スレスレになるようにセッティングすることで、ボディ下部(特にフロント)を流れる空気の気圧を下げダウンフォースを得ることができます。ただし、レギュレーションにより最低地上高が規定されているので、静止状態の時からスレスレというわけにはいきません。ターン進入時にブレーキングに合わせてスプリング/ショックが適切な量を適切なタイミングでストロークするようにセッティングします。
ストレートでのスプリッターの位置

ターン中のスプリッターの位置

このセッティングのトレンドとして"BBSS(Big Bar Soft Spring)"と呼ばれるものがあります。スプリングを柔らかくし、スウェイバーは固くすることでRFのストロークをLFへ(その逆も)伝わりやすくする狙いがあります。
完璧なコイルバインドセットを作るのは非常に難しく、スプリング/ショックが柔らかすぎればスプリッターが路面を擦ってしまいフロントが完全にグリップを失ったり、フロントのグリップにリアがついていかずにルース過ぎるセットになったりということにもなりかねません。そういう時はコイルバインドのことは忘れてしまって、単純にメカニカルグリップを得るセットを追及したほうが速いかもしれません。

スウェイバー(Sway Bar)

スウェイバーはRFの動きをLFへ(その逆へも)伝えるパーツです。両サイドのロウアーコントロールアームに接続されており、シャシーには完全に固定されているわけではなくある程度動くようになっています。

ターンを旋回している時、車体がアウト側へロールしRFのスプリングが縮められますが、この力がスウェイバーを介してLFにも伝わり、LFのスプリングも同等に縮むことになります。片方の力がもう片方へ、どの程度伝わるかはスウェイバーの直径やスウェイバーアームの長さで決まります(もちろん、スプリングレートやショックのセッティングも影響します)。要するに、スウェイバーによりフロントの左右の荷重配分の動的な変化を調整することが出来ます。リアも含めて考えるとクロスウェイトが変わるということになります。しかし、ターンのどの地点でどの程度ルースもしくはタイトにするのかを緻密に調整しようとするとスウェイバーだけでは補いきれません。そこで出てくるのがLFリンクの調整です(後述)。
RFの動きにLFが追随する様子はこちらの動画で観れます(1:53〜2:10あたり)。
http://www.nascar.com/video/cup/2009/10/03/cup.kan.speed.performance.nascar/index.html

LFのリンケージ

ロウアーコントロールアームとスウェイバーアームはダイレクトに接続されているわけではなく、繋ぎ方が調整可能なパーツを介して接続されています。ハイムジョイント(heim joint)・スレッド(thread)等いろいろな呼ばれ方がありますが、ここでは単純に”リンク”と言うことにします。

スウェイバーの項で「緻密な調整はスウェイバーだけでは出来ない」と書きました。具体的にはどんな調整が要求されるのでしょうか?
例えばターンの進入時にいち早くLFのスプリングを縮めたい場合は、リンクスラック(リンクの長さ)を調整することであらかじめスプリングを縮めておく(プリロードをかける)ことができます。他には、バンピーなトラックを走る時や、インサイドギリギリを攻める必要があるトラックでエプロンを踏む可能性がある場合の対応も必要です。この場合、LFのスプリングが急激に縮められると(コブを乗り越える等して)、その力がRFにも伝わってしまい、ボトミングしたり車が不安定になったりします。それを回避するためにはチェインリンクを用います。チェインリンクはLFの動きをある程度”フリー”にします。手さげ鞄を持っている時を想像してください。腕がスウェイバーアーム、鞄本体がタイヤ(もしくはコントロールアーム)、鞄の取っ手がチェインリクです。腕を曲げれば鞄は持ち上がります。しかし、鞄の底に反対の手を当てて持ち上げても、取っ手が「クシャッ」となるだけで腕の動きには影響しません。これがチェインリンクです。

シンメトリックARB

(基本的にこちらの内容の翻訳になります。また、ARB = Sway Barですが、原文にならってARBのまま表現しています。)
サスペンションやタイヤを左右非対称にセットアップするのはオーバルでは珍しくありませんが、ARBも例外ではありません。取り付け方により左右の作動率に差をつけます。効果を単純に表すと、ストレートでハードなブレーキングすると車体が左にロールする、といった具合です。
これにより、スプリッターが路面に対して平行に接していない時、例えば左が右よりも浮いている場合はARBの非対称さを増すことで解消できます。
リアの場合は、今までスプリングレートに差を付けて行っていたことをARBで代替したり、リアを落ち着かせる効果があります。

トラックアーム(Truck Arm)

トラックアームは、シャシーの中央とリアアクスルを結ぶパーツです。

(画像は『Stock Car Race Shop: Design and Construction of a Nascar Stock Car』から引用)
iRacingではシャシー側のマウント位置を変更することができ、これによりリアステアの効果を調整します。例えば加速時にリアに荷重が掛かったとき、マウント位置によってトラックアームの水平方向の長さが以下のように変わります。
マウント位置が高い場合、トラックアームは伸びる。

マウント位置が低い場合、トラックアームは縮む。

左右でマウント位置を変えるとリアステアの効果が発生することになります。

トラックバー(Track Bar)

トラックアームの項の写真にもトラックバーは写っていましたが、TOM'Sの東條様のブログにさらにわかりやすい写真があったのでここでも示します(転載許可ありがとうございました>東條さん)。

トラックバーはリアアクスルとボディフレームを繋ぎ、リアアクスルの水平方向の位置を保持します。LR(リアアクスル側)とRR(ボディフレーム側)のジョイント部の高さを変えることができます。
LR側

RR側

文章だけではトラックバーの働きがピンときませんが、一発で理解できるGIFアニメがこちら(こちらのサイトから引用)。

要するに、リアの沈み込み・浮き上がりに合わせてリアアクスルが水平方向に動きます。極端な表現になりますが、トラックアームとトラックバーのコンビネーションによって下の図のようにリアステアが発生することになります。